企業やイベント会場の宣伝や案内などで、今や不可欠のデジタルサイネージ。その用途が広がるにつれて、製品も様々なタイプが登場。デジタルサイネージというワードだけでは括れないほど、急速な進化を遂げてきました。デジタルサイネージを目的に沿って活用するために製品のタイプを大きく4つに分け、それぞれのメリットやデメリットなどを解説します。

画質がきれいな液晶ディスプレイ

フルハイビジョンや4Kも表現


現在最も普及しているタイプは液晶ディスプレイ。テレビやスマホ、パソコンなどのモニターとしても身近です。解像度が高いのでデジタルサイネージに活用しても画質が鮮明なのが最大の特徴。フルハイビジョンや4Kなどの映像もイメージ通りに表現することが可能で、需要の多さからサイズも幅広く売り出されています。

液晶ディスプレイのデジタルサイネージは至近距離での表示に向いています。小売店の店頭や駅のコンコースの柱などで、よく利用されているのもその理由から。構造的にも、ひとつひとつの画素(ピクセル)が細かいので近い距離で見やすくなっています。また、製品によって異なりますが、液晶ディスプレイの輝度は250~2500カンデラ程度。家庭用のテレビは200カンデラ程度なので、見る人がまぶしすぎないような設定が可能です。

取り扱いには細心の注意を

大画面での運用については輝度や視野角、白と黒のコントラスト比はLEDに軍配があがります。ただ、液晶ディスプレイを複数面を組み合わせて大画面をつくる手段も人気。組み合わせた際に外枠ができてしまうことや、LEDよりもやや暗い面が気にならなければ、十分な迫力を演出することもできます。

液晶ディスプレイのサイズは年々大きくなっている傾向にあるので、今後は大画面向きの液晶ディスプレイも登場するかもしれません。また、気を付けたいのは取り扱い方。液晶なので衝撃に弱い面を考慮して、細心の注意を払う必要があります。

LEDディスプレイは圧倒的な高輝度

アイキャッチは抜群

LEDディスプレイは圧倒的な高輝度が特徴です。縦横50センチほどのユニットを組み合わせていく手法なのでサイズも融通が利き、高輝度での大画面表示が可能。計り知れないほどのアイキャッチ効果を期待できるのがLEDディスプレイのデジタルサイネージです。

輝度は一般的に800~8500カンデラで、日中の屋外の光にも負けない明るさで表示することができます。コントラスト比も液晶ディスプレイより優れているので、メリハリのある映像表示を実現。LEDディスプレイはイベント会場などの大画面で多く利用されているほか、ビルの屋上や側面など、通行人に離れた場所からでも認識してもらう目的で選択されるケースも多いようです。

価格は高めでもランニングコストはお得に

LEDは海外での普及率は高いですが、国内では液晶ディスプレイが主流なので導入コストは高め。それでも、価格は年を追うごとに大幅に下がる傾向にあり、最近は取り扱うお店が増えてきています。そしてLEDは省エネ性能で知られる通り、消費電力が安くなるので長期的な運用ならランニングコストが抑えられるメリットもあります。

また、至近距離で液晶並みの高画質をLEDディスプレイで実現するには相当なコストがかかっていましたが、こちらも技術の進化は目立っていて、高輝度で高画質を誇るLEDディスプレイも普及の兆しがあります。LEDディスプレイを取り扱う注意点を挙げるなら、熱がこもるような環境だと故障のリスクが高まること。画面の表面温度はできるだけ50℃以上にならないようにするのが理想的です。

有機ELディスプレイは薄くて軽い

ただいま発展途上…パネルを曲げるのも可能に

このところ、有機ELという次世代型のディスプレイが注目されています。現在はスマートフォンでの普及が進んでいますが、デジタルサイネージの世界にも進出中で、最大の特徴は薄さと軽さ。厚みは5ミリ程度で一般的な液晶ディスプレイと比べると10分の1ほどです。ガラスではなくプラスチック基板なので、画面を曲げることも可能。平面にとらわれない活用法も可能になります。

有機ELディスプレイは自家発光方式です。コントラストもしっかりと表現され、画質も液晶ディスプレイに負けないほど。視野角にも制限はありません。また、発光させるのに必要な電力は液晶ディスプレイと比べると1割程度。電気料金の節約も期待できます。狭いスペースでの設置も容易で美しい画質が提供できる有機ELディスプレイには、デジタルサイネージの大きな可能性を感じます。

現状では値段が高く寿命も短い

いいところばかりに見える有機ELディスプレイですが、まだまだ発展を続けている段階です。そのため、導入コストがかかるのが現状。寿命も他のタイプのディスプレイと比べても短く、日光の下など明るい場所では見えずらいので、屋外に設置する場合には太陽光を遮るなどの工夫も必要になります。

それでも、有機ELディスプレイは、これまでの常識を覆すようなポテンシャルを持っています。デメリットを上回るだけの魅力は十分。2019年にサムスンから画面を折り曲げられるスマートフォンが発売されましたが、今後はスマホ、薄型テレビ、そしてデジタルサイネージの分野で、有機ELはどんどん進歩を遂げることになるかもしれません。いずれにしろ、有機ELはこれからの進化次第で、デジタルサイネージの主流に取って代わる可能性があります。

プロジェクターは簡単設置で大画面が可能

低価格にユーザーから熱視線

デジタルサイネージはディスプレイによる映像表示の他に、プロジェクターが選択される例も増えてきました。ショーウィンドウやビルの壁などにスクリーンフィルムやシンプルなパネルを貼って、プロジェクターで映像を投影。特に暗い場所での見栄えに優れているので、現在プロジェクターは夜間で多く活用されています。

投影距離を遠くすることで大画面の実現も可能。ディスプレイを使って大画面の映像を流すには投資コストも高くなりますが、プロジェクターなら場合によっては半分以下のコストで目的を達成できるので、ユーザーからの支持を集めています。設置や接続も簡単。機材によってはプロジェクターに直接USBを挿すだけで運用できるものもあります。ディスプレイのように店内スペースを圧迫することもないので、設置場所の選択肢も広がります。

日中は不向きも柔軟性は魅力

夜間でより目立つのがプロジェクターを使ったデジタルサイネージですが、日中や明るい場所では液晶、LEDディスプレイを使用した場合を比べると若干見ずらいのがウィークポイント。解像度についてもプロジェクターの出力を考慮してコンテンツを用意しないと、きれいに映らないこともあります。

それでも、場所を取らない柔軟性と環境へ溶け込むような映像の表示を可能にするのがプロジェクター。従来のプロジェクターは光源ランプの寿命が短く、交換の手間もありましたが、現在はその寿命も長くなりました。コスト減への進化を続けているのも、プロジェクターの大きなセールスポイントです。

製品の特徴を知って効果的な運用を


社会にすっかり馴染んできたデジタルサイネージ。製品はますます進化の方向に向かっていくのは間違いありません。タイプが幅広くなる分、使用する目的に応じて、向きと不向きが今後は顕著になっていくことも考えられます。現状で主流となっているタイプの特徴をしっかりと把握しておくことは、今もこれからもデジタルサイネージの適切な運用の近道となるでしょう。