デジタルサイネージは、情報提示や空間演出の手段として利用が急速に広まっています。どこで使うか、何に使うかによって選ぶサイネージのタイプも変わります。クラウド型のデジタルサイネージは、ほかの2つのデジタルサイネージタイプに比べてできることも多いタイプです。
デジタルサイネージにはどんなタイプがあるのか、そしてクラウド型デジタルサイネージの特徴について解説します。実際にクラウド型のデジタルサイネージを導入する際に注意すべきポイントとして参考にしてください。
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デジタルサイネージのタイプの一つ「クラウドサイネージ」とは
クラウド型のデジタルサイネージの特徴を理解するために、まずは他のデジタルサイネージタイプとの違いを明確にすることが大切。
デジタルサイネージには「スタンドアロン型」「ローカルネットワーク型(オンプレミス型)」「クラウド型」の、大きく分けて3つのタイプがあります。それぞれの特徴と違いを整理してみましょう。
スタンドアロン型とクラウド型の違い
スタンドアロン型デジタルサイネージとクラウド型デジタルサイネージの大きな違いは、コンテンツを表示する方法です。
スタンドアロン型は、内蔵もしくは付属のSTB(セットトップボックス)に、SDカードやUSBメモリを挿入してコンテンツを再生します。コンテンツ自体はパソコンを使って作成しますが、記憶媒体を使用する点が大きな特徴です。
パソコンとネットワーク接続する必要がなく、電源さえあればすぐに準備完了。簡単に導入できるタイプと言えます。
記憶媒体に保存したコンテンツを表示するので、表示内容を変更する際には記憶媒体を差し替える必要があります。当然、1台ずつ記憶媒体を交換するため、デジタルサイネージが複数台ある場合には時間と手間がかかってしまいます。1台ずつ差し替えることはもちろん、10台なら10台分の記憶媒体へデータを保存する時間も必要です。
クラウド型はパソコンで作成したコンテンツを、ネットワークを介してデジタルサイネージに表示します。複数台を遠隔で操作できるので、コンテンツの更新が楽にできます。
ローカルネットワーク型(オンプレミス型)とクラウド型の違い
ローカルネットワーク型デジタルサイネージとクラウド型デジタルサイネージの大きな違いは、ネットワークへのつなぎ方です。
ローカルネットワーク型は、独自の回線で端末をつなぎます。台数が多ければその分だけ接続するための物理的なケーブルが必要になり、設置に時間がかかります。ネットワークの設計や独自ネットワークのための独自サーバーが必要です。
インターネットがなくても使用できるので、インターネット上での不具合に影響されることがありません。インターネット上の不具合はネット側で解決してくれますが、ローカルネットワーク上での不具合は自分たちで解決しなくてはいけません。管理会社を要請したりとメンテナンスにも費用がかかります。
クラウド型は、インターネットを利用したネットワークです。独自のネットワークを設計、構築する必要がなく、ローカルネットワーク型より早く導入が可能です。インターネットに接続されていれば、どの場所でもどの端末でも操作が可能になります。
クラウド型デジタルサイネージにしかない特徴
「クラウド」という言葉通り、インターネット上で情報を取得したりまとめたりできることが、クラウド型デジタルサイネージの大きな特徴です。クラウド型デジタルサイネージにしかない特徴も、インターネットならではのものになります。
1つ目は、コンテンツの幅が広がること。クラウドで得た情報をそのままデジタルサイネージにリンクできます。帯に表示される天気情報や道路交通情報などがその例です。これらは、クラウドサイネージ用の販売がされています。
2つ目は、意外と導入が簡単なこと。インターネットの環境があればすぐに始められます。端末もそれぞれインターネットに接続すればOKです。ただし、サーバーはクラウドサイネージ専用のサーバーを用意した方がいいでしょう。クラウドサーバーを利用しているため、サービスのアップデートも自動更新でできメンテナンスの負担が軽減されます。
3つ目は、コストカットもできること。サーバー代などの運用コストはかかってしまいますが、独自のネットワークを構築する費用はカットできます。コンテンツを自主制作し、ディスプレイなどもこだわりすぎずに選択すれば、思っているより安くできるかもしれません。
クラウドサイネージを具体的にどう有効活用するか
クラウド型のデジタルサイネージでできることは幅広いですが、導入用途によっては必ずしもクラウド型である必要はありません。
クラウド型デジタルサイネージの特徴やメリットをしっかりと有効活用するためにも、その特徴がどのような場面に役立つのかを整理しましょう。
いつでも新しい情報を簡単に更新
最新の情報を常に更新していくコンテンツを表示する場合は、クラウドサイネージが適しています。
例えば渋滞情報や、災害情報、緊急時の情報などは、事前に予測して準備しておくことができません。時間によって状況が刻々と変化し、それらを即座に情報としてサイネージで伝えるならば、クラウドサイネージが必要となります。
反対に、飲食店で今月のメニューを表示するなど、最新の情報と言えど緊急度が低いものであれば、クラウドサイネージである必要はありません。
複数拠点での情報共有がスムーズに
クラウドサイネージは、マーケティングや顧客に対する情報共有にのみ有効なわけではありません。一般企業において、スタッフの情報共有のために取り入れる事例が多くあります。
例えば工場勤務のスタッフは、1日パソコンに触れない人もいます。情報を取りに行く場所が、紙媒体が使われている掲示板という職場もあるでしょう。
そうした場所にクラウドサイネージを使い、さまざまな雇用形態や業務内容にある人が等しく情報を得られる環境を作っています。本社と支店、工場など、離れた場所の複数端末を一括で操作することができ、表示する情報も日々新しく更新できます。
クラウドサイネージへの移行でコストカット
紙媒体の話が出ましたが、クラウドサイネージを採用することでコストを削減できる場所が多くあります。
紙そのものの費用、印刷費用は、クラウドサイネージにすれば不要です。デザイン料は、クラウドサイネージにおいても他社に依頼するようであればかかります。システムに関する部署を持っていて、専属で操作できる人がいれば自社で賄える費用でもあります。
さらに、紙媒体の場合は、それを各拠点へ郵送したり、掲示するための時間と人手が必要ですが、クラウドサイネージならディスプレイの設置が完了すれば全てを遠隔で1端末から発信できます。
サーバー代や電気代は新たにかかりますが、結果的に紙媒体よりも運用コスト削減が可能です。
「クラウドサイネージの価格」で見落としてはいけない3つの費用
デジタルサイネージの導入にあたっては、どうしても情報を表示するためのディスプレイなどに注視しがちです。しかし、実際に運用するにあたって重要なのはランニングコストです。
初期費用とランニングコストの2つの観点から、クラウドサイネージの価格について解説します。
クラウドサイネージの初期費用
必ずかかる費用が、ディスプレイの代金です。ディスプレイは業務用ディスプレイと一般用ディスプレイとがありますが、連続使用することを考えると業務用ディスプレイにするのはマストと言えます。
業務用ディスプレイを選ぶ理由は、連続使用や屋外での使用に耐えうる耐久性だけではありません。より美しく映像を映し出すスペックです。「とりあえず見えれば」と思うかもしれませんが、ディスプレイの鮮明な映像は、ユーザーに的確に情報を伝えるために重要な要素です。
その点を加味しても、ディスプレイの価格はピンキリなので、大幅にコストカットできることもできます。使用時間が限られていて暗めの場所で利用するのであれば、性能の優れた一般用ディスプレイで足りる場合もあります。
ディスプレイを設置するための工事費用も忘れてはいけません。ディスプレイの大きさや数、設置場所によって価格は大きく変動します
また、ディスプレイがあるだけではコンテンツの表示はできません。ネットワークで送られてきた情報をキャッチしてディスプレイに反映させるSTB(セットトップボックス)が必要です。ディスプレイに内蔵されているタイプもあります。
クラウドサイネージのランニングコスト
クラウドサイネージのランニングコストは、大きく分けてサーバー代(回線費用)と電気代の2つ。
サーバー代は、自宅にインターネット回線を引くのと同じイメージ。月に4,000~5,000円ほどです。デジタルサイネージの導入とをセットにしたプランを各プロバイダーが提示しているため、そちらを利用するのも良いでしょう。
電気代はディスプレイの数や稼働時間によって変動します。1ディスプレイであれば1万円を超えることは滅多にありません。
クラウドサイネージのサービスを利用する費用
プロバイダーだけでなく多くのメーカーが、デジタルサイネージのサービスを展開しています。
多くはコンテンツの作成費用と運用管理を含んでいて、「こんな頻度でこんな内容を・・・」といったぼんやりとしたイメージを形にしてくれます。
ディスプレイのレンタルを兼ねているサービスプランも多いです。ですが長期的に見て、ディスプレイを購入したほうがコストダウンになることもあるので注意。
サービスの費用は、多くが初期費用と月額で構成されていて、端末1台ごとの計算です。
どこまでを自社で行い、どこからは委託するのか、しっかり見極めて、予算にフィットしたサービスを選択しましょう。
クラウドサイネージを味方につけて一歩進んだ戦略を
クラウド型のデジタルサイネージは、特徴とメリットを有効に活用すれば、事業の大きな手助けとなります。視覚的にも人を惹きつけることは確かです。
導入にあたってはランニングコスト、さらには費用対効果も洗い出さなくてはいけません。導入した場所や用途と同時に、継続して使用するにあたっての予算を明確にし、適した価格の導入方法を選びましょう。