パソコン上の作業で簡単に秒単位での静止画・動画の切り替えができるデジタルサイネージ。印刷や取り換えに手間のかかる紙媒体の広告や不特定多数に向けて作られるCMよりも、高いコストパフォーマンスが期待できる広告の形として注目度が高まっています。この記事ではデジタルサイネージ導入にあたって気になるコストについて紹介します。

【導入コスト】デジタルサイネージ導入にかかる初期費用

「デジタルサイネージにディスプレイが必要なのはわかるけれど、それ以外はいまいちよくわからない」という人も多いかもしれません。デジタルサイネージ導入に当たって必要なコストは大きく5つです。

ディスプレイ

ディスプレイは大きさだけでなく屋内用、屋外用によっても価格が大きく変わります。一般的に屋内用のスタンドアロン型なら43〜55インチで10〜40万円、屋外用なら32〜42インチで40〜80万円ほど。屋外用は屋内用に比べて輝度(ディスプレイの明るさ)や防塵、防水処理が必要になるため高価になります。

設置にかかる工事費用

スタンドアロン型であればそのまま立てるだけなので設置費用は特にかかりませんが、壁掛けにする場合には別途ディスプレイの設置費用がかかります。また、インターネット環境がないところでネットワーク接続型のデジタルサイネージを利用する場合は、インターネット環境の構築やWiFiルーターの準備が必要です。

スタンドアロン型:ディスプレイだけを用意して、USBなどの記憶媒体から情報を表示させるタイプ。

STB

STB(セット・トップ・ボックス)はディスプレイにコンテンツを再生するために必要なプレーヤーのこと。ディスプレイ内蔵型もありますが、ディスプレイを繋ぎ変えることができるSTB単体のものもあります。STBはシンプルな機能のものなら1万円程度からあり、比較的リーズナブルです。

ディスプレイにパソコンを直接繋いで映像を流すこともできますが、複雑で汎用性の高いパソコンよりも、スイッチ一つですぐ起動できて故障に強く設置場所にも困らないSTBの方がデジタルサイネージには向いています。

CMS

デジタルサイネージは、秒単位でコンテンツの切り替えができて最適なタイミングで情報発信できるのが大きな魅力。そしてそのコンテンツ再生スケジュールなどデジタルサイネージの運用管理を行うシステムがCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)です。複数のデジタルサイネージを運用するならほぼ必須のシステムだと考えておきましょう。

CMSはサーバ構築やダウンロードの手間が省けるクラウドサービスを利用するもの一般的で、その場合は1端末あたりの月額料金(4000円〜1万円程度)を支払って利用します。

コンテンツ制作

デジタルサイネージ導入の要であるコンテンツ制作。デジタルサイネージを購入した代理店から提供されるコンテンツ制作ソフトやフリーソフトを使って自社で制作することも可能ですが、動画や音声付きのものなど複雑なコンテンツを外注する場合は別途費用が発生すると思っておきましょう。

【ランニングコスト】クラウドタイプ or オンプレミスで差がでる

長期的な目線で必要なコストは主に3つ。運用タイプによって変わるのでイメージしながら確認してみましょう。

電気代

デジタルサイネージに必要な電気代はディスプレイの大きさと輝度によって変わります。一般的な家庭用テレビの輝度が150〜200カンデラであるのに対し、直射日光が当たらない屋内用ディスプレイは300〜700カンデラが目安。直射日光が当たる屋内用や屋外用ディスプレイは最低でも700カンデラ、理想は1500〜2000カンデラだと言われています。

1日8時間毎日稼働で月当たりの電気代を比較すると、50インチの屋内用(450カンデラ)なら780円、50インチの屋外用(1500カンデラ)なら1700円が目安です。

クラウドタイプなら月額料金

デジタルサイネージの運用に関しては初期費用が抑えられてすぐに運用が開始できるクラウドサービスを利用したものが主流になりつつあります。カスタマイズの自由度は低いもののサーバーのトラブルなどに自社で対応する必要がないので、メンテナンスに不安があるなら月額料金を払ってクラウドサービスを利用するのがおすすめです。

ただ、インターネット環境がないと利用できないこと、サーバー提供側の障害に巻き込まれて配信が止まってしまうリスクがあることは頭に入れておく必要があるでしょう。

オンプレミスなら随時メンテナンス費用

自社で専用サーバーを設置してコンテンツ配信などを行うのがオンプレミス型です。新しくサーバーを構築しなければならないので初期費用はかかりますが、カスタマイズの自由度が高くインターネット環境がなくても配信ができるのが魅力。セキュリティ面でも自社サーバーを利用したオンプレミス型ならネットワークを通さないので安心です。

ただ、サーバー構築のための費用や時間が必要で、サーバートラブルなどが起こった場合にも自社で対応しなければならずクラウド型に比べると手間がかかります。サーバーの維持管理の費用も積み立てておく必要があるでしょう。

レンタルや月額料金制のプランはお得?

「購入前にまずは使い勝手を確認しておきたい」「イベント時だけ利用したい」とお考えなら、一定期間のレンタルや月額料金制を利用してみるのもおすすめです。

短期間の利用ならお得

使用日が決まっているならSTBやCMSの利用料が全て含まれているレンタルは便利。1日からレンタル可能な業者も多いので展示会やイベント時には役立ちます。

また、試用期間として一定期間使ってみたいという場合は月額料金制のプランを提供しているところがおすすめ。月額1万円以下でディスプレイはもちろんSTBやWiFiルーター、簡単なコンテンツ制作ソフトまで付いているプランもあります。

長期的にはもちろん購入したほうがお得になりますが、レンタルをうまく活用してデジタルサイネージに慣れるのも一つの方法です。

コンテンツや運用方法については要チェック

レンタルや月額料金制の場合、STB、CMSなども含まれているか、コンテンツ製作のサポート面、レンタル期間中の故障の対応などもしっかりチェックしておきましょう。ディスプレイだけのレンタルではデジタルサイネージを使いこなすことはできません。安さだけでなく運用面含めて安心してレンタルできるかが大切です。

テレビモニターやデジタルフォトフレームで代用は可能?

広告をディスプレイに流すだけならテレビモニターやデジタルフォトフレームで代用可能なのでは?と考える人も多いでしょう。しかし、デジタルフォトフレームの利点を最大限活かすならデジタルサイネージ専用のものを使用した方が良いです。

△パフォーマンスが落ちる

デジタルサイネージ専用のディスプレイと家庭用ディスプレイでは輝度(ディスプレイの明るさ)に差が出ます。スマホも明るい屋外では画面が自然と明るくなるように、明るいところほどディスプレイの明るさが必要です。
太陽光が差し込む屋内や屋外では最低でも700カンデラの明るさが必要とされていますが、一般的な家庭用テレビの明るさは150〜200カンデラしかありません。これでは代用しても視認性が落ちてしまい十分なパフォーマンスは期待できません。

△スタイリッシュさに欠ける

家庭用ディスプレイを使う場合、多くの場合は横長タイプで使用することになるでしょう。店頭に置いてあるような縦型のスタイリッシュなタイプは難しいですし、大きなサイズで写したい場合は複数のディスプレイを組み合わせるしかありません。

そうなると、コンテンツ自体は再生できてもどこか垢抜けない印象に。デジタルサイネージの魅力はスタイリッシュさ、かっこよさも含まれます。それらを含めて検討しているのであればデジタルサイネージ専用を利用するのがおすすめです。

パフォーマンス重視ならデジタルサイネージ導入がおすすめ

デジタルサイネージは広告・販促はもちろん、その視認性の高さとスタイリッシュさで空間演出にも効果を発揮します。導入後の運用についても、サポートがしっかりしている代理店を選べば初心者でも問題ありません。他社と差をつけるなら今までとは違う広告の形を導入してみては?