広告や情報表示などの手段として広く用いられているデジタルサイネージ。電子看板とも言います。導入するにあたって悩ましいものの一つが、情報を表示するディスプレイです。使いたい場所に最も適したタイプはどれか、コストダウンはできないのかなど、気になるディスプレイ情報を解説します。

ディスプレイとは?

スマートフォンやテレビ、パソコンなど、いつもよく見るディスプレイ。映像を表示する大事な機器です。デジタルサイネージに使用するディスプレイは、その環境下に耐えうる機能を備えた業務用ディスプレイが適していると言えます。テレビなどの家庭用ディスプレイとの違いとは何なのでしょうか。違いや特徴を把握すれば、価格の違いにも納得できるかもしれません。

デジタルサイネージのディスプレイの特徴

デジタルサイネージの専用ディスプレイというものは基本的にありません。ただ、デジタルサイネージの使用を加味した業務用ディスプレイが、使用に適していると言えるでしょう。業務用ディスプレイは、いろいろな場所で長時間使用することに耐える機能が必要です。
主な特徴は以下の通りです。

・屋外でも使用できる防水防塵機能がある
・コントラストや輝度など、どの場所からでも見やすいように調整できる
・縦での情報表示が可能
・マルチディスプレイで使用しやすい縁
・遠隔で操作でき更新がしやすい

業務用ディスプレイはどんな角度でも見えやすかったり、雨風の中でも使用できるなど耐久性に優れています。どの環境下であっても人々に伝わる情報を表示することが、デジタルサイネージのディスプレイには求められるのです。

テレビとデジタルサイネージのディスプレイの違い

デジタルサイネージに使用する業務ディスプレイの特徴から分かる通り、テレビなどに使用する一般用ディスプレイとの違いは、耐久性などの機能です。
テレビは、長時間連続して使用することを前提としていません。後述しますが、輝度などの数値が低いため、太陽光の下では見えなくなってしまいます。使う場所が限定されてしまうのが一般用ディスプレイです。

また、テレビは縦に使用することができません。さらに、テレビをデジタルサイネージに使用すると補償されない場合もあります。テレビは「テレビ放送を見ること」が目的のディスプレイであり、それ以外の目的に使用すると補償外になってしまうためです。

デジタルサイネージのディスプレイの価格帯は?

業務用ディスプレイの特徴や一般用ディスプレイとの違いから分かる通り、業務用ディスプレイの価格はテレビなどの一般用ディスプレイより価格が高くなるのが一般的。さまざまな環境に適応するための機能分、値段は上がります。

ちなみに、30型前後のディスプレイは以下のような価格帯が目安。メーカーやスペックによって価格は変動します。業務用ディスプレイには10万円前後のお手頃な商品もありますが、価格の幅が広く高額な商品も豊富にあることが特徴です。

・屋外用ディスプレイ 20~120万前後
・屋内用ディスプレイ 10~40万前後
・一般用ディスプレイ 10~20万前後

デジタルサイネージのディスプレイを選ぶ前に知っておきたい用語

テレビなどに使用する一般用モニターと業務用モニターの違いはわかりましたが、「業務用ディスプレイさえ買えばOK」というわけではありません。ディスプレイのスペックは多様にあり、使う場所や求める機能、自分に適した操作性などによって、最適なディスプレイを選び取らなくてはいけません。ディスプレイ選びにも関係する、デジタルサイネージ導入で知っておきたい用語をチェックしましょう。

STB(セット・トップ・ボックス)

デジタルサイネージを導入するとき、パソコンとディスプレイだけではサイネージはできません。ディスプレイはあくまでも映像を映す機械であって、それ自体に映像をキャッチする機能はないのです。その機能を果たすのがSTB(セット・トップ・ボックス)。パソコンなど情報データを送る機械とディスプレイの間にあるイメージです。

これは業務用ディスプレイに限ったことではありません。テレビも同じで、ディスプレイはあくまでも映像を映す機械であり、内蔵されたチューナーがデータをキャッチしディスプレイに反映させています。
別々に揃えることもできますが、業務用ディスプレイにもSTBが内蔵されたものがあるので、それを選択するのも一つの手段でしょう。

スタンドアロン・ローカルネットワーク・クラウド


次に、デジタルサイネージの導入タイプです。「スタンドアロン型」「ローカルネットワーク型」「クラウド型」の3つにわけられます。

・スタンドアロン型
ディスプレイに表示する内容をUSBメモリやSDカードなどの記憶媒体に保存し、STBに直接挿入するタイプです。ネットワークで機器をつなぐ必要がなく、導入が簡単なメリットが
あります。機器の更新や表示内容の差し替えは一台ずつ手作業で行わなくてはなりません。

・ローカルネットワーク型
パソコンなど情報を送る機器とSTBとを、限定的なネットワークで接続するタイプです。オンプレミス型とも言います。スタンドアロン型と違って、複数台を同時に更新することが可能です。インターネット下でなくても使用できることがメリットです。

・クラウド型
限定的なネットワークではなく、インターネットの回線を利用するタイプです。ロカールネットワーク型と同じく複数台の動作が可能です。インターネットの回線を利用しているので離れた拠点も操作でき、インターネット上のサービスを直接反映させることができます。独自のネットワークを構築する必要がない分、導入が簡単なことがメリットです。

色の再現性と輝度

ディスプレイを選ぶときの一つの指標が、「最大表示色」です。色の表示数が多いほど鮮明で再現度の高い画像が映ります。一般用モニターは6ビットから8ビットのものが多く、最大表示色は1677万色。膨大な数値に感じますよね。

しかし、デジタルサイネージに使用するディスプレイは最低でも10ビットあったほうが良いと言われており、最大表示色は10億以上です。数値が高いほど滑らかなグラデーションを表現できます。

その美しい画像を、環境にあわせて見やすく表示するのに関係するのが輝度(カンデラ)です。輝度は画面の明るさであり、輝度が高いほど明るい場所でもしっかり見えます。テレビなどのように家庭で使用する場合には400カンデラで足りますが、屋外で使用するとほとんど見えません。屋外で使用するディスプレイは、1200~5000カンデラが望ましいとされています。

デジタルサイネージのディスプレイ選びのポイント

ディスプレイのスペックは非常に幅広いわけですが、「一台だけだからスタンドアロン型でいいかな」とか「屋外で使いたいから輝度は必須だな」など、イメージが湧いてくると思います。スペックに応じて価格も変動しますから、最終的には予算にフィットする商品を選ばなくてはいけません。ディスプレイ選びのポイントをまとめました。

使用場所に適したディスプレイ選び(屋外使用か屋内使用か)

大きなくくりとして、屋外で使うか屋内で使うかがポイントになります。屋外の場合は先述した輝度だけでなく、雨風に耐える防水防塵機能や、ガラス強度が求められます。ただ、屋内で使用する場合でも照明は家庭より明るいことがほとんどなので、ある程度の輝度は必要です。

また、会議スペースに使用するディスプレイなどのように正面にのみ見る人がいる場合と、駅の時刻表のようにさまざまな場所から見えることが要求される場合とでは、視野角の広さの最低レベルが変わります。

デジタルサイネージは連続再生することが前提ですが、例えば居酒屋など営業時間が限られた場所に表示するデジタルサイネージだとしたら稼働時間は短くなります。その場合は一般用ディスプレイでも十分で、その分コストを抑えられるかもしれません。まずは使う場所、使い方をイメージしてディスプレイを絞りましょう。

情報が伝わるサイズを見極めるディスプレイ選び

ディスプレイが小さくて表示されている内容が見えないのは問題ですが、大きければ良いというものでもありません。広い会議室で利用し、奥の席まで情報を伝えるにはサイズの大きなディスプレイが必要です。

一方、スーパーマーケットなど販売商品の横に商品情報を表示するのに、数メートル離れないと全体像が掴めないようなサイズを置いても意味がありません。ユーザーがどの距離からディスプレイを見るかを把握してから、ディスプレイのサイズを選択すべきと言えます。

コンテンツ更新やメンテナンスを前提にしたディスプレイ選び

ディスプレイに求めるスペックやサイズが決まったら、実際にどの形で導入するかを考えます。一台だけ設置し、表示内容を変更する頻度が少ないのであればスタンドアロン型でも不足なく運用できるでしょう。

複数台を同時に操作する場合にはローカルネットワーク型かクラウド型が適していますが、アップデートの仕方が変わります。ローカルネットワーク型は自身でアップデート作業を行う必要がありますが、クラウド型の場合はアップデートは自動更新で行うことも可能です(携帯電話などの更新と同じ)。

一方、クラウド型はサーバー上のトラブルに影響を受けますが、ローカルネットワーク型はそれがありません。どの運用スタイルが自分に合っているかで導入方法を見極めましょう。

適切なディスプレイを選んでデジタルサイネージを開始

デジタルサイネージを導入することで、広告展開や情報表示のバリエーションが一気に増えます。デジタルサイネージの導入にはディスプレイ以外にも費用がかかりますから、コストカットしたいところ。

しかし、業務用ディスプレイと一般用ディスプレイではそもそも使用の目的が異なっており、デジタルサイネージという使用目的に適したディスプレイを選ぶことは長い目で見た時に安全策となります。場合によってはディスプレイの各機能についての知識を習得する必要があるかもしれません。思い描くデジタルサイネージの運用に向けて、適切なディスプレイを選びましょう。