アナログ式の広告媒体に変わるものとして、現在注目を集めているのがデジタルサイネージ。導入すれば大きな訴求効果をもたらしますが、設備一式揃えるのは意外と大変ですよね。ここでは、さまざまある設備からstb(セットトップボックス)に注目します。stbの役割やメリットなどポイントを見てみましょう。

デジタルサイネージのstb(セットトップボックス)とは?

そもそもstbは、テレビの視聴の器機としてよく知られていますね。デジタルサイネージを導入する場合、なぜstbが必要となるのでしょうか。ここでは、stbの役割や種類、構成など見てみましょう。

stbはなぜ必要?

stbは、映像や音声を視聴可能な信号に変換するために必要となります。衛星放送やケーブルテレビの視聴のための器機としておなじみです。放送信号を受信して視聴可能な状態にします。

『set top box』という名前は、stbがテレビ用として使われ始めた頃の名残です。当時はstbをテレビの上、つまり『 top』に置いたためこう呼ばれるようになりました。

デジタルサイネージで使用する場合も、役割としては同じ。デジタルサイネージのコンテンツの信号を受け取り、再生可能な状態にします。

デジタルサイネージでは業務用のディスプレイと繋げて使うため、stbは「ディスプレイメーカーと揃える」というケースが多いでしょう。

stbの種類

ひとくちにstbといっても、サイズや仕様は異なります。特にデジタルサイネージの場合、設置場所によってはstbを置くスペースさえ無い場合もあるでしょう。そのような場合にも対応できるよう、stbにはコンパクトなものもあります。

まずもっとも一般的なのが、置き型のstbです。TV用でよく見るようなボックス型で、カラーもありふれた黒色をしています。ごく普通のサイズのものなら、縦横13~15cm程度、高さ3~4cm程度というケースがほとんどでしょう。

ボックスタイプの特徴は、耐久性が高いこと。屋外での使用を想定されたものもあり、タフな作りが魅力です。

一方、ボックスタイプを置くスペースも無い場合に重宝するのがスティックタイプ。ほとんどが手の平に収まるようなサイズ感で、コンパクトに使用できます。デジタルサイネージのディスプレイに直接さして使うため、わずかな場所さえあれば設置できます。

ただし、耐久性についてはボックスタイプにはかないません。スティックタイプを選択する場合は、設置場所の環境等をよく考慮する必要があるでしょう。

stbの種類の構成

stbはハード面・ソフト面の双方で構成されます。

まずハード面は、放送波を受信する「チューナー」、受信した放送波を再生できる状態に変換する「デコーダー」のほか、CPU、メモリ、デスクランブラ、ネットワーク接続チップなどで構成されます。ただし目的達成のために必要なstbの機能を一つに統合したCPUを選択すれば、ハードの簡略化や省電力化を図ることも可能です。

また、ソフト面はOS、起動時に動くブートローダー、その他アプリケーションなどから構成されます。OSについては「Linux」が一般的でしたが、近年はwindowsやAndroidを使用するものも少なくありません。

使用環境や目的によって最適なハード・ソフトは異なるので、よく考えて選びましょう。

デジタルサイネージでstbを使うメリットとは?

デジタルサイネージで、PCではなくstbを使うメリットとは何なのでしょうか。ここでは、stbを選択することによって得られるメリットを詳しく紹介します。

操作が簡単

stbのメリットの一つが、操作が簡単なことです。実際のところ、stbが無くともPCがあればデジタルサイネージの運営は可能です。しかしPCは高機能なぶん、立ち上がりに時間がかかったり、不要な機能が付いていることも。デジタルサイネージの管理を行うことだけが目的なら、PCではハイスペックすぎるかもしれません。

一方、stbはデジタルサイネージのために特化されたもの。仕組みは非常にシンプルで、余計な機能が付いていません。ボタン一つですむことも多いうえ立ち上がりもスムーズなので、PCに弱い人でもさほど戸惑うことなく使えるでしょう。

壊れにくい

シンプルに作られたstbは、PCと比較すると部品もわずか。HDDなど不要なものを搭載していないので、そのぶん壊れにくいのが魅力です。

デジタルサイネージの使い方は、屋外だったり長時間だったりとハードな場面も多々あります。何かあるたびに故障していては、デジタルサイネージの目的である「宣伝広告」の役割を果たすことができません。故障すれば修理費用もかかりますし、耐久性の高さはデジタルサイネージを展開するうえで非常に重要なことといえるでしょう。

場所を取らない・選ばない

デジタルサイネージ用に特化されたstbは、PCと比較してもとてもコンパクト。前述のとおりスティック型なら手の平に収まるので、狭い場所でも設置可能です。コンパクトサイズなら狭小な場所にもおけるほか、高い場所、不安定な場所への設置もできます。

デジタルサイネージを設置する際は、誰しももっとも有益な場所に置きたいものです。コンパクトさが売りのstbなら、デジタルサイネージにとっての「最善の場所」に設置しやすくなります。

デジタルサイネージ導入コストを抑えられる

stbの作りのシンプルさは、価格面でも大きなメリットがあります。使われている部品や機能が少ないぶん、コストはダウン。それなりのスペックのPCを1台購入するよりも、導入コストは低く抑えられるでしょう。

ただし、stbとひとくちにいっても、使用目的にあわせて機能はさまざま。高度な宣伝広告を展開するデジタルサイネージならstbにもハイスペックが求められるため、価格はアップします。

相場は一概にはいいにくいですが、あえて述べるなら、ネットワークに対応しない非配信型で1万円~、ネットワーク型なら5万円~となるでしょう。

stbを有効活用するならネットワーク型デジタルサイネージ

デジタルサイネージの中でも「ネットワーク型」の導入を考えている場合は、stbが必須です。stbをつかったネットワーク型デジタルサイネージとはどんなものなのでしょうか。

ネットワーク型デジタルサイネージとは

ネットワーク型デジタルサイネージとは、ネットワークを経由してコンテンツの管理を行うデジタルサイネージです。stbの使用が不可欠ですが、使用するディスプレイには「stbレス」「stb設置型」の2種類があります。

まずstbレスとは、ディスプレイにstbが内蔵されているタイプ。stbを置く場所さえ無い時に便利です。一方stb設置型は、ごく一般的なデジタルサイネージと同じ。運用にはボックス型またはスティック型のstbが必要です。

設置場所や使用方法に併せて最適なものを選びましょう。

ネットワーク型デジタルサイネージの種類

ネットワーク型デジタルサイネージには、「ブロードキャスト型」「インタラクティブ型」の2つの種類があります。両者の違いは、「双方向からのアクションが可能かどうか」という点です。

まず、ブロードキャスト型はネットワークを経由してコンテンツを配信しますが、ユーザーとのコミュニケーションを図ることはできません。配信は常に単一方向からのみで、ユーザーとのコミュニケーションの情報を得たり蓄積したりすることは不可能です。

一方、インタラクティブ型は、タッチパネルなど設置するデジタルサイネージ。ユーザーとの双方向からのやりとりが可能で、ユーザー自身が必要な情報を選択できます。タッチパネルを通したやりとりはデータとして蓄積されるため、今後の運営の指針とすることも可能。無駄なく効率よくユーザーに情報提供できるため、宣伝効果や訴求効果はより高いといえるでしょう。

ネットワーク型デジタルサイネージを選ぶメリット

ネットワーク型デジタルサイネージは、ネットワークを介した予約や設定変更が可能です。stbを一括で管理するため、複数台でデジタルサイネージを展開している場合は、管理にかかる手間暇が大幅に軽減されるでしょう。

また、ネットワーク非対応のデジタルサイネージでは、現場に赴いてstbの設定などを変える必要がありました。しかしネットワーク型なら、遠隔地のstb管理も簡単。担当者が離れた場所まで行く必要はありません。複数台あるいは遠隔地のデジタルサイネージを運用するなら、ネットワーク型の方が圧倒的に有益なのです。

stbでデジタルサイネージの使用をより快適に

デジタルサイネージ用に特化されたstbがあれば、デジタルサイネージの使用や運用がより容易になります。耐久性・コストともPCより優れているので、ディスプレイなどと併せて購入するとよいでしょう。

また、ネットワーク型デジタルサイネージを使う場合は、stbが必須です。さまざまな機能を持つものがあるので、効果や目的と照らしながら過不足無いものを選んでくださいね。