店舗や公共機関などで急速に浸透しているデジタルサイネージ。屋外でもさまざまな場面でディスプレイを見る機会も増えました。会社、店舗経営者で導入を考えている方も多いと思いますが、屋内と屋外は注意点にやや違いがあります。目的に沿ったデジタルサイネージの効果的な活用へ、4つのポイントについて解説します。

設置目的に応じた大きさや明るさを

街で見かけるサイズも参考に

デジタルサイネージを屋外に設置するなら、まずは目的をはっきりさせること。大きく分けて考えるなら通行人にアピールするのか、それとも遠くから大勢の人に見えるようにするのか。どちらかを意識してディスプレイのサイズを選ぶといいでしょう。

現在は屋外だと50~70インチのものをよく見かけますが、サイズは幅広く選択肢があります。縦横比なら4対3、16対9が主流。今やデジタルサイネージはかなり普及している状況なので、街中には参考になるデジタルサイネージがたくさん設置されています。気に入ったサイズのものを見つけたら、そのイメージをメーカーや業者に伝えて検討を進めるのも、目的にあったサイズ選びの近道かも知れません。

そして、屋外設置で特に重要なのは明るさ。例えば直射日光があたるような場所だと、太
陽の光が反射してディスプレイが全く見えない、という危険性もあります。反射防止のフィルムやガラスを使う手段もありますが、設置場所によってはそれでも反射してしまう場合も。天候状況や設置場所の関係を考慮して、ディスプレイの明るさはきっちりと設定する必要があります。

進化しているLEDビジョン


デジタルサイネージのディスプレイは、カンデラという単位で輝度が設定されています。およその目安ですが、液晶タイプのディスプレイなら屋内使用では700カンデラ以上で視認性にほぼ問題はなく、屋外使用なら1200以上が望ましいと言われています。完全に青空の下という条件なら、液晶ディスプレイでは最高レベルの輝度となる2500カンデラのディスプレイを選んだ方が良いとされています。

そして、高輝度を実現するLEDビジョンが現在どんどん進化しているのも注目です。5500カンデラの明るさを誇るタイプもあり、日中の直射日光をモノともせず、遠くからでも画像がはっきりと認識できる大型のLEDビジョンを街中で見かけることも少なくありません。そのようなディスプレイは当然インパクトも大。広範囲にアピールする目的や、イベント会場などでの使用も検討しているなら、LEDビジョンは特に優れた効果を発揮するでしょう。

防水や防塵対策はしっかりと

雨やほこりは故障や劣化を早める原因に

デジタルサイネージを屋外に設置するなら避けられないのが雨、ほこり。これらはデジタルサイネージの故障や劣化を早める原因ともなります。

デジタルサイネージの製品には「防水」「防滴・防雨」などが印されています。「防水」は雨に強いのはもちろん、側面や下からの水濡れにも対応。「防滴・防雨」は上からの水濡れには対応できますが、横殴りの雨には弱い一面もあり、「防水」とある製品の方が品質が高いことになります。ただ「防滴・防雨」の製品でも極端に質が落ちるわけではなく、台風や暴風雨レベルでない限り、大きな差を実感することはあまりないようです。

防水、防塵能力を数値化したIP

デジタルサイネージには防水、防塵の能力を示す「IP(International Protection)」という規格があります。屋外用のデジタルサイネージでは「IP54」「IP55」のタイプがよく出ているようです。

2つ表されている数字のうち、最初の数字は「人体及び固形異物に対する保護等級」。数値は0~6、後の数字は「水の侵入に対する保護等級」で数値は0~8。つまり「IP68」とあれば、防水、防塵の能力は最強となります。

屋外用のデジタルサイネージの防水、防塵については現在、「IP55」程度なら十分な耐久性があるとされています。ただ、常時屋外に置くのであれば、防塵については最強の6レベルも欲しいところ。また、ディスプレイには保護カバー、ガラスを取り付けることも、劣化の進行を食い止めることには効果があります。

高温や振動にも気を使って

涼しい春や秋でも油断せずに

雨、ほこりに加えて、デジタルサイネージの屋外設置について注意したい点はまだあります。気温が高くなったり、直射日光を浴び続けるとディスプレイは熱を持つので、それが原因となる故障やブラックアウトの危険性を考えなければなりません。

対策としては冷却ファンやエアコンを取り付けたり、デジタルサイネージの外側に遮熱板と呼ばれるパネルを付け合わせて、熱を逃す方法があります。また紫外線カットや遮熱に効果のあるフィルムを貼ることも有効です。

気温が上昇する夏場に注意するのはもちろんですが、春や秋でも油断はできません。夏だと真上から日光を浴びますが、春や秋は太陽の光がやや横からの角度となる分、夏よりもディスプレイの面に向かって直射を受ける時間が多くなり、熱を持ちやすいシチュエーションも生まれます。デジタルサイネージの寿命は3~5年などと言われていますが、故障の原因となる対策をしっかり取らないと、劣化をさらに早めることにもなりかねません。

交通量が多いところの設置は注意を


交通量の多い道路や電車の高架下など、振動のある場所の設置もデジタルサイネージの故障のリスクは高まります。ただ、デジタルサイネージを屋外に設置する効果を見込むなら、振動がある場所はなかなか避けられるものでもありません。

現在は電源のタイプによって振動に強いとされている製品も出ていますし、振動リスクを軽減する方法は今後も進化していくはず。こちらもメーカー、業者としっかり話し合いましょう。

屋外広告物条例の存在にも注目

都道府県によって違いが…自治体に問い合わせを

デジタルサイネージを屋外に取り付ける時は各自治体の屋外広告物条例を確認しておきましょう。設置する場所や、大きさなどに制限が設けられている場合があるので注意が必要です。

東京都の場合を例に挙げると、まずは完全に設置が禁止されている場所があります。学校や図書館、病院など公共性の強い建物の敷地内や葬儀場、社寺、教会。また国など公共団体が管理する公園や敷地、また居住地域で景観が重視されているエリアなどでは、屋外広告が認められていません。

細かい規定がある場合も


設置が認められる場所にもサイズに制限があり、地上から10メートル以下(一部、条件を満たすものは13メートル以下)と定められています。広告の面積や建物から突出して置く場合に関しても、細かい規定があります。さらに道路、鉄道沿いに設置する場合も別の規定が定められています。

電車や自動車などの外装には原則許可は下りません。屋外広告物条例は地域によって違いがあるので、デジタルサイネージの屋外設置を検討する時は各自治体の担当部署に問い合わせましょう。

屋外デジタルサイネージで集客の差別化を図ろう


デジタルサイネージを屋外で使用すればさらなる集客効果が期待できますが、導入にあたり防水対策や高温対策、また屋外広告物条例も考慮して進める必要があることが分かりました。対策を行った上で業者としっかり相談し、デジタルサイネージを活用していきましょう。