近年、街中で見かけることが増えた「デジタルサイネージ」。紙媒体の広告と違って動画を流すことが可能であり、時間帯に応じて広告内容を変えられるなどのメリットがあります。ここでは、具体的なデジタルサイネージの事例を紹介します。海外の興味深い事例もピックアップしていますので、デジタルサイネージの導入にお役立てください。

デジタルサイネージの取り入れ方・事例3選

一口に「デジタルサイネージ」と言っても、何を目的に取り入れるかによって設置場所や表示内容などの切り込み方が変わります。デジタルサイネージ導入の最終目的は「効果を得ること」です。さまざまな場所でのデジタルサイネージの導入事例と、その効果を紹介します。

電車内で停車駅を教えるデジタルサイネージ

デジタルサイネージの導入目的の一つが、「情報表示」です。デパートのフロアガイドなどがその例で、目にすることも多いでしょう。その中でも特に効果を感じられるのが、電車内のデジタルサイネージと言えます。

電車のドア上部には、大抵2画面の並列したディスプレイがあります。一方には電車の進行状況や次の停車駅などの情報が表示され、もう一方にはさまざまな企業の広告が表示されます。以前は紙の路線図と吊り広告が主流でした。

しかし、多くの停車駅が羅列された路線図の中から現在地や目的地を見つけるのは、時に難しい作業の場合もありますよね。現在駅、次の駅、全体図と繰り返し表示されるデジタルサイネージならより早く必要な情報をユーザーへ伝えられます。

スーパーで特売情報を伝えるデジタルサイネージ

デジタルサイネージの導入目的の二つ目が、「マーケティング」です。飲食店やアパレルなど多くの商業施設の店頭にあるデジタルサイネージが想像できるのではないでしょうか。色鮮やかにくるくると絵が変わるデジタルサイネージはとても目をひきますよね。

それはスーパーマーケットの中にも見つけることができます。食材の横に設置された小さなディスプレイ。商品のディスカウント情報や産地情報などが表示されます。食材を使った調理例などが表示されることもあります。これらの情報は、「今日のご飯は何にしようかな」や「この食材を使って何を作ったらいいのかな」と考える消費者に即座に解決方法を与え、
購買意欲を高めることにつながります。

空間演出としてのデジタルサイネージ

最後に挙げるデジタルサイネージの導入目的は、「空間演出」です。特に商業施設において、売り場の雰囲気や顧客の購買意欲を左右する重要な役割を果たします。

例えばサマーフェアで水着やマリンスポーツの品を売るなら、美しい波が打ち寄せる海の映像があると効果的だと思いませんか?例えば秋のハロウィーン商戦では、おばけなどの装飾を施してポップなイメージを作り出したいけれど、実際に布などを使って作るには時間も手間もかかります。

デジタルサイネージを使用すれば、映像で簡単に空間演出することができ、しかもシーズンや時間によってすぐさま変えることができます。ディスプレイを多用して天井や床などにもデジタルサイネージを使えば、非常に印象深い空間演出が可能になります。

デジタルサイネージの事例・導入場所別

デジタルサイネージの導入を業種別で考えた場合、その業種の特色や果たすべき役割に準じてデジタルサイネージに必要とされる効果も変わります。自治体、商業施設、工場の3つにわけて、具体的事例を紹介します。デジタルサイネージを導入するメリットもあわせてチェックしましょう。

自治体

さまざまな自治体で、フロア案内や観光・事業PRなどのためにデジタルサイネージが使用されているのを見ることができます。自治体が運営する施設では連日複数の行事が開催されることもあり、そのスケジュールについて「どの部屋で何時から何時まで」「その部屋はどこにあるか」といった情報を早く取得できます。

多くの自治体で見られる導入例は、災害時の情報管轄でした。複数の拠点のリアルタイム映像をデジタルサイネージで一括管理できます。管轄内の情報を正確に把握することは住民への避難指示などを実施する上で必須です。デジタルサイネージが持つ迅速性と正確性のメリットが、緊急時の現場をサポートすることが期待されます。

商業施設

商業施設では、フロア案内などの情報表示、購買運動を促すマーケティング、そして装飾を担う空間演出の全てがデジタルサイネージで叶えられていると言えます。フロア案内は、タッチパネル式を採用することで見たいエリアや見たい店の詳細な情報を得られるメリットもあります。

例えば、新宿区のあるドラッグストアでは、デジタルサイネージを利用して顧客への力強いアプローチを展開しています。顔認証システムとタッチパネルの両方を備えたデジタルサイネージで、顧客一人一人にあわせたクーポンを発行。これは顧客満足度を高めるメリットがあります。

工場

工場におけるデジタルサイネージの導入については、現場の進捗管理と情報共有の事例が多くみられました。複数の製造ラインや監視カメラの映像を一元管理し、トラブル発生を未然に防ぐだけでなく、トラブル発生時の対応を迅速に実施できることがメリットです。

また、工場スタッフの中には一日を通じてパソコンに触れる時間がなく、社内の情報を取りに行けない人も多くいます。さまざまな雇用体制にあるスタッフが等しく社内の情報に触れることができるよう、食堂などにディスプレイを設置して情報共有を図る工場も多くありました。

見やすい場所にすぐに設置でき、動画や音声を併用することでわかりやすく情報を伝えられるデジタルサイネージは、情報を共有する術としても有益と言えるでしょう。

デジタルサイネージの事例・海外編

ここまで国内のデジタルサイネージの事例を紹介しました。国が変わればデジタルサイネージの活用方法も変わるのでしょうか。どうやら、“伝えるメッセージ”にその国らしさが出るようです。海外のデジタルサイネージの事例から興味深いものを厳選して紹介します。

British Airwaysの事例

2013年12月にイギリスの航空会社、British Airwaysが行ったデジタルサイネージ広告が、多くのロンドン市民を魅了しました。

特大のディスプレイには小さな男の子が1人。おもむろに上を指さします。すると空に本物の飛行機が!「見て、バルセロナ発のBA475便だよ。」というメッセージ。最後は「もっといろいろな目的地へ、もっと飛び立とう」と締めくくられます。

デジタルサイネージのディスプレイと実際の飛行機を融合したユニークな事例。飛行機の時間に合わせて広告表示ができるデジタルサイネージならではの広告と言えます。
YouTubeには「素晴らしいマーケティング」「British Airwaysよくやった」といったコメントが見られます。

Currys PC Worldの事例

2015年のクリスマスにCurrys PC Worldが行ったキャンペーンは、特定の人へメッセージを送る手段の一つにデジタルサイネージを採用したもの。そのメッセージとは「クリスマスプレゼントのおねだり」です。

まずは参加者が、欲しいプレゼントとおねだりする相手の行動パターン(よく行く店や通る道)を登録します。そのメッセージが相手に届くようにデジタルサイネージに表示されるというキャンペーンです。

紙媒体も使用していますからデジタルサイネージに限定したキャンペーンではありません。しかし移動する相手にタイミングを合わせてメッセージを送るのは、デジタルサイネージのメリットを活かしていると言えるでしょう。実名を出したマーケティングが愛をもって迎えられるのは、海外らしい事例と言えます。

ストックホルムのドラッグストアによる禁煙キャンペーンの事例

前出の例で、メッセージを印象深く伝えるのにデジタルサイネージが有効であることがわかりました。スウェーデンストックホルムのあるドラッグストアはこの効果を「注意喚起」に利用した、禁煙キャンペーンを実施しました。

屋外に設置されたディスプレイには1人の男性が映っています。そのディスプレイの周辺で喫煙すると、ディスプレイの男性が咳き込むのです。最後は「新年の抱負は?」というメッセージ。デジタルサイネージの下に煙探知機がセットされており、たばこの煙を感知するとディスプレイ内の男性が咳き込む仕組みです。喫煙が周囲に与えている影響を突きつけ、「禁煙します」という意志を引き出すという、とてもクリエイティブな事例です。

効果的なデジタルサイネージに求められるもの

情報表示やマーケティング、さらに空間演出も兼ねているデジタルサイネージは、今の日本にも多く存在します。自治体では災害活動に導入されるなど、幅広い場面で有益な活用がなされていると言えるでしょう。ただ、デジタルサイネージの数が増えたことによりマーケティングにおいては同種のサイネージに埋もれることも。伝えたいメッセージを印象強く伝え確かな効果を生み出すためには、導入形態から一歩進んで内容にこだわっていく必要もあるかもしれません。