2022年には約3兆円にもなると言われるデジタルサイネージの世界市場規模。ただの紙媒体の広告の代わりとしてではなく、革新的な技術との融合による新しいツールとして今後も成長が期待されている市場です。日本国内における市場規模の推移や今後の展望などを見ていきましょう。

国内市場規模は2025年に3708億円に(2016年比2.8倍)


デジタルサイネージの国内市場規模は右肩上がりに成長中。まだまだ海外に比べるとデジタルサイネージの認知度が低いと言われる日本ですが、今後は加速度的に導入、そして導入後のビジネスが拡大すると言われています。

3つに分けられる市場とそれぞれの展望


デジタルサイネージ市場は主に3つの分野に分けることができ、それぞれ今後の成長予想が異なります。

システム販売/構築

「サイネージ向けディスプレイ」「配信システム」「その他ディスプレイ」の3品目が分類されるのがシステム販売/構築分野です。

デジタルサイネージの設備投資に関わる分野で、2017年ごろまでデジタルサイネージ市場の中で最も多くの割合を占めていました。ディスプレイやSTB、CMSなどデジタルサイネージ運用に不可欠なものを販売しており、2020年の東京オリンピックを見据えて公共施設や観光地、ホテルや旅館などで急速に新設、追加設置の需要が増えています。

技術革新によりLEDディスプレイの低コスト化も進んでいるため、東京オリンピック以降は伸びが鈍化するとみられていますが、ローカルブランディング、インバウンド対策の一環として観光地などに設置するケースも増えているためしばらくは成長が見込まれています。

コンテンツ制作/配信サービス

「コンテンツ制作」「配信・運営・管理」の2品目が分類されるコンテンツ配信/配信サービスは、主にデジタルサイネージ導入後のビジネスになります。

一般的に医療機関やクリニックでは作業負担軽減のためにコンテンツの制作、配信サービスまで委託するケースが多いです。また、金融機関や交通機関などではセキュリティ面に強いオンプレミス型の導入も多く更新の頻度、専門性が高いコンテンツが必要になることからサービス単価が高くなる傾向があります。

一方、小売店舗などではクラウドサービスを利用したデジタルサイネージの導入が増えており、基本的に導入以降は自主制作、自主運営のスタンスの店舗が多いです。業種によってサービス単価に差はあるものの、デジタルサイネージ導入増加に伴い順調に拡大していく分野と言われています。

デジタルサイネージ広告

「ビルボード(屋外ビジョン)」「交通広告」「インストアメディア」の3品目が分類され、今後最も伸びると言われている分野です。

今までは1つの場所につき1枚しか貼れなかったポスターが、デジタルサイネージになることで圧倒的な情報量を効率よく発信可能です。ビルボード(屋外ビジョン)はすでに飽和状態になりつつありますが、LEDディスプレイの低コスト化によって家電量販店やロードサイドへの設置数が増加。

その他にも美容室やネイルサロン、タクシー、コンビニ、医療機関、自治体などでも大きなディスプレイからタブレットサイズのものまで様々なデジタル媒体の導入が進んでいることから、これらのデジタル媒体を利用した広告ビジネスの増加が期待されています。

「安価に手軽に導入したい派」or「高性能・高付加価値派」


デジタルサイネージにどんな役割を求めていますか?デジタルサイネージ導入にあたっては、コストを抑えて「安価に手軽に導入したい派」と、マーケティングや市場調査も兼ねてスマートフォンと連携するなど積極的にデータを取得していく「高性能・高付加価値派」に分けられます。

デジタルサイネージについて知識が少ない段階では家庭用テレビモニターでも代用可能ではないかと考える人も多いと思いますが、デジタルサイネージ専用ディスプレイと家庭用テレビモニターでは輝度が違うため、特に明るい屋内や屋外では視認性に大きく関わってきます。

たとえリーズナブルであってもデジタルサイネージの最大の利点である視認性の高さが損なわれないようにディスプレイは専用のものを選ぶ必要があるでしょう。

そして、高性能デジタルサイネージの中には一方的な情報発信だけではなく、スマートフォンと連携したり、AIを搭載しユーザーとの双方向コミュニケーションが可能なものもあります。世界的にデジタルサイネージ導入が進む中で、市場を活気付けているのはこの高性能のデジタルサイネージです。

デジタルサイネージはスマートフォンと同じようにシンプルで簡単なものから複雑で機能が豊富なものまで様々な種類があります。見た目のスタイリッシュさだけでなくデジタルサイネージに何を求めるのかで適切なディスプレイや運用プランを選ぶようにしましょう。

オリンピック以降も市場規模が拡大すると予測される2つの理由


オリンピックまではデジタルサイネージ導入にあたる設備投資の分野が成長することは予想できますが、それ以降も市場が拡大を続けると言われているのはなぜなのか。そして、今デジタルサイネージを導入しておくべき2つの理由を説明します。

AIとの融合で革新的なサービス提供が可能に


紙のポスターや、広告を流すだけのデジタルサイネージは大衆向けに作られたもので、顧客はそこから自身に必要な情報をピックアップしなければならないという手間がありました。

そんな中、デジタルサイネージの活躍の幅を広げているのがAI。AIを搭載することで今まで一方向からの情報発信だったものが双方向のコミュニケーションツールに進化します。

音声認証や、顔認証などで個人を識別できるようになればその人に合った情報だけを的確に届けることが可能になります。顔認証により性別や年齢を判断し、おすすめの飲み物を提案してくれる自動販売機などがその一例です。

そして、AIとデジタルサイネージの融合の流れは今後加速度的に進むと考えられており、コンテンツ制作や配信サービスもその流れに沿った変化が必要とされます。膨大な情報の中から、顧客個人のためのまさに「オーダーメイドコンテンツ」が表示されるようなデザイン、システム開発が必要となるのです。

システム導入以降のサービスの利用者が増える


大型ディスプレイからタブレット端末まで、デジタルサイネージ導入が進んで街に溢れる多くのデジタル媒体を活用する流れは今後さらに活性化していくと考えられます。ポスターのように印刷の手間や時間がかからないデジタルサイネージなら、掲載期間ギリギリまで広告募集をかけることができて広告販売の効率もアップ。

また、通勤時間帯には会社員向けの広告、スーパーマーケットには主婦向けの広告など、広告掲載側も放映する時間帯や掲載場所を吟味しターゲットを絞り込んだアピールが可能になります。イベント時など1日だけ広告を掲載してほしい、1週間だけ掲載してほしいという細かな要望にも柔軟に応えることが可能になれば、個人としての広告掲載希望者も増えていくと考えられます。

デジタルサイネージ導入にかかるコストは低価格化しつつ、デジタルサイネージを用いた様々なビジネスが拡大していくタイミングでの導入は、今後のビジネスの幅を広げるはずです。

可能性が広がる!デジタルサイネージで差をつけて


デジタルサイネージは多様な可能性を持ったビジネスツール。その市場は現在進行形で拡大中で、今後も広がり続けると言われています。

広告を流すための電子看板として、空間演出のツールとして、さらにはAI搭載のコミュニケーションツールとして。アイデア次第で無限の活用法があるデジタルサイネージを導入してビジネスに差をつけてみては?